ファッション誌を読んでいると『ハイゲージニットを上品に着こなす。』と言った記事をよく見かけると思います。
また後述するジョン・スメドレーを紹介する記事では『究極のハイゲージニット』『吸い付くような肌触り』などと言った、フレーズを使うことが多いようです。
漠然とですが、ニットにありがちなチクチク感はない、キメの細かい編み方のニットだろうということは想像できますが、その定義を聞かれると正確な答えには窮してしまいます。
まず、ハイゲージニットの定義とはどういうことなのか。そして、その魅力とはなにか。着こなしで心掛けたいポイントは。以上を踏まえたうえで紹介するブランドから気になるものを選んでください。
【考察】ハイゲージニットについて知りたい。
ハイゲージの定義について。
まずゲージとはナニを指しているかを理解するところから始めましょう。ゲージとは、ニットを作る編み機の「針の密度を表す単位」のコトです。
業務用の編み機では、織りあげる製品によって編み針の設定を変えます。この時1インチ(2.54cm)を基準にして、その間に針を何本セットしたかという違いによって、出来上がる製品のカテゴリィを変えています。
ゲージの単位が多くなると、使う糸は必然的に細いものになります。番手の細メリノウールなどが主流です。つまり網目が細かく薄手の製品が生まれるのです。
一般的に「1インチの中に12本以上の針を使って編んだニット」のことをハイゲージニットと呼んでいます。
ハイゲージニットの魅力
ハイゲージニットは、糸が細く薄手な仕上がりになります。しかし網目が細かいため、薄手なのですが熱を逃がさない構造になります。つまり保温性も高いのです。
薄手なので重ね着がしやいのも利点です。コーディネートの幅が広がります。一枚で着ることも、シャツの上に重ね着しても窮屈な思いをすることはありません。
女性に多くみられますが、ハイゲージニットの重ね着つまりアンサンブルといった楽しみ方も可能です。
そして、しなやかな表情と柔らかい肌触りこそがハイゲージニットの真骨頂でしょう。高級感にあふれ上品な雰囲気が漂います。
しかし組み合わせ次第では、カジュアルなシーンでも活躍します。守備範囲が広いのもハイゲージニットの魅力です。
ハイゲージニットを着こなす。
着こなしは様々ですが、質感を上質に保つことが必要です。
パンツであればウールパンツが定石ですが、デニムでも問題ありません。しかし洗濯の効いた清潔なものであること、ルーズなシルエットは避けたほうがいいでしょう。
ダメージや個性的なプリント入ったパンツならばハイブランドのものを選びます。ヌケ感を思わせるギミックであれば不自然さはありません。
クルーネックのプルオーバーであればTシャツ感覚で使えます。保温性の高いレザージャケット例えばb3タイプの中に仕込めば、上質なカジュアル感が楽しめます。もちろんモンクレールのインナーでも。
タートルネックならタイプを問わずインナーとして最適です。VネックならばシャツだけでなくTシャツと組み合わせれば若々しい印象が出せます。
大人世代で使い勝手のいいのはカーデガンタイプが一番かも知れません。シャツやT シャツとの組み合わせの他にも、ニットベスト代わりにジャケットの下に使えば表情が豊かになります。ネクタイもしっくり収まります。
靴や時計、アクセサリーなども手入れの効いた上質なものを選べばとけ込んでくれるはずです。
ハイゲージニットおすすめメンズブランド1. ジョンスメドレー
1784年、創業者のジョン スメドレー氏と共同経営者によりイギリスのダービシャー州リーミルズで設立されます。はじまりは綿糸の紡績と生地作りが中心でしたが、ニットウェアの製造へ事業を展開していきます。
その後、全工程を自社で行うという企業方針が確立します。次の世代に確実に受け継がれ、卓越した職人技が絶えることはありません。
綿糸の紡績と生地作りから始まった歴史にならい「原料には最上級の品質を用いる」という素材に対する強い思入れもブランドの特徴です。主に秋冬ものにはメリノウール、春夏向けにはとシーアイランドコットンの2つを使っています。
メリノウールはニュージーランドの牧場と直接契約を結び、質の高いモノだけを仕入れています。しっとりとした肌触りと上品な光沢、適度な重さもあり、シワがつきにくくストレッチ性もある、他では味わえない最上級の素材です。
編み方も30ゲージを採用。12ゲージ以上がハイゲージニットとされているので、30ゲージの細かさ、高密度、繊細さが分かると思います。
その質に高さは、英国王室御用達ということからも立証されています。英国王室のみならず、世界中のセレブたちにもファンが多く、トム・クルーズ、マドンナ、ショーン・コネリーなどが名を連ねています。
ハイゲージニットおすすめメンズブランド2. クルチアーニ
1966年、イタリアの内陸部で創業したニットブランドがクルチアーニです。しかし自社コレクションを発表したのは1993年という、比較的新しいブランドだと言えます。
基本的に全工程を自社で手掛けていて、原毛を糸に変える工程(紡績)から縫製まで、一つの工場で行えるため、高品質でありながらコストパフォーマンスの高い製品を生み出してます。そのため”ニットの最高峰”と評されることも。
デザイン性の高さもさすがイタリア、クルチアーニならでは。デザインチームは常に次シーズンのアイデアを求めて世界中を駆け回り、デザインに落とし込んでいます。
タイトなシルエットを得意にしていて、アームホールを独自の解釈で処理することで一枚で着た時だけでなく、ジャケットを羽織った時でも、快適なフィット感を約束しています。
先進性とクラシック、そしてな高品質。このバランスを保ち独自のスタイルを提案し続けているのもクルアチーニならでは魅力です。
また、クルチアーニは27ゲージを採用しています。12ゲージ以上をハイゲージニットと呼びますが、ゲージ数にとらわれずクルチアーニならではの感触を優先させています。
ニット製品が中心ですが、気の利いた小物・アクセサリーも用意されているので贈り物などにも重宝します。
ハイゲージニットおすすめメンズブランド3. サンスペル
1860年にイギリスで創立したサンスペルは、父がタイツや靴下を作っていたことからメリヤス製品やレースの商売を始め、アンダーウェアを取り扱う事業を展開していきます。
創業時から素材の革新に熱心でした。「シンプルな日常着を美しい素材で作る」というビジョンを掲げ、創業から150年以上経過した現在でもサンスペルの信念として引き継がれています。
1930年代には、シー・アイランド・コットン100%のアイテムを扱うようになります。カットソー地への強い思いを感じることのできる老舗ブランドです。
インナーは機能性を追求する傾向にあります。しかしサンスペルは高品質なエジプト綿など天然素材を用いることで、それらに負けない着心地や快適性を提供しとています。
その信念と技術はカットソー作りに生かされていて、シンプルで寡黙なデザインからは想像できない、雄弁な着心地を実現しています。
さらにニット製品を手掛けることになると、インナー作りで培ってきたストレスを感じさせない作り込みで、他ブランドでは体験できない着心地を提供するようになりました。
カットソーの上にハイゲージニットを合わせるだけで、包み込むような安心感を得ることが出来ると言えます。もちろんアンダーウエアもお揃いで。
ハイゲージニットおすすめメンズブランド4. ザノーネ
ZANONE=ザノーネは1986年の創立、イタリアのニットウェアブランドです。翌年にはメンズウェアとレディースウェアの初のニットコレクションを発表し注目されました
流行に左右されないシンプルなデザインと快適な着心地が共存することから、イタリア本国はもちろん、日本でも経験を重ねた世代に広く愛用されてます。
基本はコットン・リネン・ウール・カシミア・シルクなどの自然素材を使う老舗ファクトリーですが、「テクノロジー&トラディショナル」というブランドテーマを掲げ、フレックスウール、アイスコットン、カシミアシェードなど独自の最高級紡糸を数多く保有する先進性も備えています。
2003年からは最高級パンツブランド「インコテックス」など、名だたる名門ブランドを輩出するイタリアのスローウェアグループに参加することで活躍の場を広げています。
ミドルゲージのニットブルゾンが特に有名ですが、ハイゲージニットのモックネックという使い勝手の良いモデルを紹介します。タートルネックでは首回りがうるさいと思われるなら試したみたいデザインです。
ハイゲージニットおすすめメンズブランド5. ルトロワ
Letroyes/ルトロワは2009年、フランス、シャンパーニュ地方で生まれたニット&カットソーブランドです。
毎日でも着たくなる心地の良いニットやカットソーは、フランスらしいエスプリの効いた色使いと、ノスタルジックで可愛いらしいデザインが人気を集めています。
MAILLE(マイユ)と呼ばれる昔ながらの丸胴編み機を使い、時間をかけて編まれたシームレスカットソーは、体を包み込むような柔らかな肌触りと抜群の伸縮性が魅力です。さらに洗濯も効くことからコスト面でも優れています。
購入してすぐに、こなれ感を得る事ができ、また手書き風のロゴが書かれたブランドタグが評判となったことから、ニットよりもカットソーの人気が先行しました。
しかし丁寧なモノ作りの姿勢はニット製品にも反映されていて、老舗ブランドとは違う親しみやすさがファンを急増しています。
ブランドイメージとシンクロするのはミドルゲージですが, 上品なハイゲージニットも人気が高まっています。
ハイゲージニットおすすめメンズブランド6. ドルモア
ドルモアは1773年、スコットランドで設立されました。この地方の水は毛糸の洗浄に最適だったことから、この水を使って仕上げられたカシミアはとても柔らかい手触りになったそうです。
そのためドルモアはカシミアニットの紡績を得意する、世界最古のニットブランドとして地位を確立していきます。
世界初のシームレスニットを開発したのもドルモアです。産業革命の流れをうけ、多くのメーカーが機械化に移行する中、ドルモアは一貫してハンドメイドを貫いていました。
着心地を優先する成果として、立体感をもつシームレスニットの方法に辿り着いたのです。
転機は2001年、イタリアの老舗ニット会社Cioccaグループ傘下にはいることに。デザイン拠点をイタリアに移したドルモアは、ブランドイメージを再定義しすることでファッションブランドとしての地位を得ることになりました。
ドルモアと言えば、カシミヤや最高級”スーパージーロンラムズウール”を使った起毛感のある柔らかいミドルゲージニットが有名ですが、2015年に発表した新ライン「ドルモアモダン(Drumohr MODERN)」でハイゲージニットが脚光を浴びます。
ファインメリノ素材を使うこと、よりモダンで、ファッション性の高いコレクションが誕生しました。
使うのは30ゲージのメリノウール。季節を問わず利用できることから、シーズンレスニットとしてラインアップされています。