起毛感のある手触りが、秋冬を代表する素材として定番ともいえるコーデュロイ。
起伏のある表面、畝の太さ、そして色の違いから、同じコーデュロイであってもそれぞれの印象が異なり、コーディネートが楽しくなる素材のひとつです。
空が高く感じるようになり、朝の空気が冷たく感じるようにならばコーデュロイ準備のサインです。
日中ではまだ暑さが残る時期ならば、ジャケットやアウターとして用いるのはまだ早いかも知れません。しかし薄い色目のパンツなら季節感の先取り、秋の装いにシフトチェンジです。
ツイードのジャケットや、シェットランドセーター、フェアアイル柄など、温もりを案じる素材とはベストマッチです。
そしてカジュアル感だけでなく、シックな印象もあるので使い方次第ではオフィスでも大丈夫という職場も増えているようです。
同じ綿素材でありながら、デニムやチノパンとは違う印象があるコーデュロイパンツを、ブランドごとに特徴や違いを取り上げてみました。
テーパードの効いた細身のデザインが大人の着こなしには不可欠ですが、デザイン的には、腰回りにゆとりを持たせたものが主流になっています。既にお持ちであれば、今年らしい1本を加えてみてください。
コーデュロイとは?
発祥はヨーロッパというのが有力で、ドイツ語(gerippter Manchester)やフランス語(corde du roi)に語源が残っていて、「王様の畝(うね)」という意味があるようです。
綿ビロードの一種で、一般にはたて方向に畝(うね)のある織物を指します。平織あるいは綾織(あやおり)の地の中に毛緯糸を織り込んでいるため、厚い生地になり、保温性や耐久性に優れています。
無地染めされることが一般的ですが、綿素材ということから染色しやすく、最近では多彩な柄物もみられるようになりました。
先の通り生地(きじ)が厚手で、耐久力があるため、実用衣料として子供服、作業服、ズボンなどに使われてきまいたが、シルクやレーヨンで織られた光沢の強い生地も生まれ、パーティーシーンでも活躍する素材として注目されています。
コーデュロイの名付け親は、ルイ14世という噂。
ベルサイユ宮殿を造成したルイ14世。その戴冠式で、南フランスの織物業者が畝のある織物を献上したと伝えられています。
耐久性と保温性からその後、庭仕事などをする召使いの制服として用いられ、Corde-du-Roi(王様の畝)、つまりコーデュロイと呼ばれるようになったという説が残っています。
日本の技術がコーデュロイの幅を広げる。
たて畝が特徴のコーデュロイですが、1センチ幅に何本の畝があるかが単位になっています。単位はウェル、畝という意味ですが、その単位が多ければ『細畝』、少なければ『太畝』ということになります。
太いほどカジュアルな印象が強くなりますが、その太さを生かし直線だけけでなく様々なパターンに織り込む技術が日本から生まれています。
そのため、生地のもつ暖かな印象が残り可愛らしさが生まれることから女性向けの小物などにも利用が広がっています。
綿素材のコーデュロイは素朴な印象がいい反面、ごわつく印象は否定できませんでした。しかし最近ではストレッチ素材を織り込んだものが開発され、そうしたストレスは感じません。
特に後述するパンツに用いることで、キレイなシルエットを保ちながら履きじわも気にならないといういいとこ取りの素材なのです。
大人のコーデュロイパンツ1. incotex インコテックス
やはり、パンツネタの特集では、ココをとありげない訳にはいきません。1951年イタリアのヴェネチアで、20人ほどの職人とともに事業をスタート。60年以上パンツ一筋という職人ブランドです。
デザインやシルエットの美しさはもちろん。それは見えない部分、細部の調整をミリ単位で仕上げることから生まれます。そうした積み重ねが、履きやすいスラックス、型崩れしないパンツという評判を得ることにつながっています。
バーバリーやプラダなどのOEMとしてパンツを供給していた事が評判になり、独自ブランドの展開につながります。現在ではパンツ(スラックス)のトレンドを牽引するブランドとして常に注目されています。
コーデュロイパンツを買い替えるなら、買い足すなら、このブランドは外せません。日本人向けのシルエットもリリースしています。価格もはりますが、定番色ではなくハズシの色目を選びましょう。
大人のコーデュロイパンツ2. PT01 ぺーテーゼロウーノ
ブランド名のPT01とは「PANTALONI TORINO NO.1」。創業地トリノから世界NO.1パンツブランドを目指すという意味が込められています。そして2008年の創業からわずか10年でイタリアを代表するパンツブランドに昇りつめました。
incotex よりも、ややカジュアル色が強い印象がありますが、このブランドでなければ味わえない履き心地、シルエットが中毒者を増産しています。
前身はトリノで4代続く生地メーカー。その事業を通じて50年以上に渡りパンツ作りのノウハウを蓄積してきました。
他ブランドとの差別化は裏地使いや、シャツの滑り止めとして用いられるマーベルトの選び方に見られます。パンツを脱いで初めてわかるギミックにファッショニスタが魅了されています。
大人のコーデュロイパンツ3. G.T.A ジーティーアー
1955年創業、パンツを専業とした工場を立ち上げたのが始まりです。日本ではINCOTEXより以前に輸入され知名度も高く、PT01を交えたイタリアが誇るパンツブランドと言えそうです。
GTAは長年のドレスパンツ作りで培った美脚、足長効果が抜群で、特にヒップの収まりがいいという評価を聞きます。ほかのふたつよりもクラシックな印象が強いかも知れません。履き心地とラインの美しさは、常に他のブランドのお手本になるほどです。
クラシックな路線を得意としていますが、高い技術を駆使してカーゴパンツをドレス仕様に格上げしたモデルや、リブパンツを落としこんだモデルなど、新しい提案を発表して新たなファンを増やしてます。
大人のコーデュロイパンツ4. Bernard Zins ベルナール・ザンス
1967年フランスのランスにて設立したパンツブランド、半世紀以上の老舗です。
丁寧な作り込みが評価され、様々なビッグメゾンのスラックスの製造(OEM)を引き受けることで実力を磨いてきました。
生地を贅沢に使い、昨今注目されてきたゆったりとしたデザインが得意です。そのためシルエットの美しさはフランスならではのエレガントを感じます。洋服好きの根強いファンが多いというも頷けます。
イタリアブランドに押されて、目にする機会が減った時期もありましたが、2012年に現代的で提案性の高いブランドへ方向を修正し、新生ZINSがリスタートしました。
現在は他ブランドのパンツの生産を行わず、自身のブランドに専念しています。新しいブティックをパリの中心サンジェルマン・デ・プレのLuynes通りに構え、確かな商品と丁寧な接客で、新たなファン作りに貢献しています。
イタリアブランドとの差別化をはかりたいのであれば、一度試着してみてください。虜になっても責任は問いかねますが。
大人のコーデュロイパンツ5. giab’s ARCHIVIO(ジャブス アルキビオ)
2012年、三代続く歴史あるスラックス専門ファクトリーであるgiab’s社が始動させたコレクションが”giab’s ARCHIVIO(ジャブス アルキビオ)。老舗ブランドの新しい提案は新鮮な感動と称賛に値するものでした。
縫製技術のクオリティもさることながら、リラックスパンツなどモダンかつ現代的ななデザインが話題になりました。さらに興味深いのは、このブランドの立ち上げにミラノで活躍する日本人が関わっていることです。
気鋭の日本人ディレクター、中新井氏がクリエイションを指揮することで半歩先ゆくトレンド感と、このブランドでしか味わえない着用感が融合し独自の世界観を構築しています。
毎シーズンのプレゼンテーションが最も注目されているブランド。そう断言しても異論はないでしょう。