『ノームコア』という言葉が世間に注目されるようになったのは2014~15年のあたりではなかったでしょうか。
MacPCの創始者というよりも、もはやiphoneの開発者として有名になったスティーブ・ジョブズ氏、またFacebookを作りだしSNSという概念を普及させたマーク・ザッカーバーグ氏。
両氏の服装がいつも同じであることから、そのスタイルやブランドを探り、それを象徴する言葉として『ノームコア』という表現を用いるようになりました。
『ノーム』とは『normal』 から派生した『標準または普通』 という意味です。そして『コア』は『hardcore』から抽出しました。両者を組み合わせた造語です。
『究極の普通』と訳されてきましたが、彼らのスタイルを観察すると決して受動的ではなく能動的に『普通』を選んでいることから、『筋金入りの普通』 と理解されるようになってきました。
【考察】ノームコアブランドとは。
故スティーブ・ジョブズは、とかくノームコアスタイルの象徴として取り上げられます。
新商品紹介のステージだけでなく、普段の生活、オフィスにおいても同じ服装を貫いました。それは『イッセイミヤケ』の黒いタートルネックニット、『リーバイス501』のデニム、『ニューバランス』900番台のスニーカーでした。
その着こなしやブランドがノームコアなのではありません。普通のアイテムを選び、普通に着ることを選ぶ姿勢、哲学こそがノームコアなのだと感じます。
アインシュタインはいつも同じスーツスタイルでした。バラクオバマ氏も大統領就任期間はグレーまたはネイビーのスーツでした。ザッカーバーグ氏はいつもグレーのT シャツ姿です。
ですから、これを選べば『ノームコアスタイル』だと結論づけることは難しいのです。そこで彼らがアイテムを選ぶ基準となったであろう『快適さ』そして『普遍性』をキーワードに、アウター・トップス・パンツそして靴、それぞれの商品を考察してみました。
ノームコアなアウター1.BARACUTA(バラクータ)G9
バラクーダの歴史は古く、1937年にイギリスのマンチェスター郊外で創業しています。当時としては画期的だった撥水性と防風性に優れたレインウエアを作り始まりめました。
その後ゴルフ用のアウターウエアとしてG9(ジー・ナイン)が誕生して以来、アウターウエアの原型として現代でも不動の人気を維持しています。
こちらのモデルは、フロントをダブルジップに改良し、素材をコットン×ポリエステルにアップデイトすることで使いやすさを追求しました。
雪の降る時期以外なら、シーズンレスで使いまわしが効きます。カラーバリエーションも豊富ですが、ベージュまたはネイビーをチョイス。
ノームコアなアウター2.ストーンアイランド ピーコート
先のG9で冬を越すのは難しいでしょう。確かにダウンジャケットという選択はあるのですが、機能性・ファッション性、普遍性を兼ね備えた冬のアウターと言えばピーコートではないかと思います。
日本では学生が着るアウターとういうイメージが強いのですが、そもそもの出自はミリタリーです。
船の甲板での作業でも風を通さな「メルトン」という高密度のウール素材を使うため重厚感のあるアウターです。
しかし、このピーコートは撥水加工を施した薄手のストレッチウールを採用することで軽量化を可能にしました。しかし薄い中綿を用いることで保温性は問題ありません。
冬でも暖かく快適、シンプルなデザインなので年齢を問いません。
ノームコアなトップス1.セントジェームス バスクシャツ
セントジェームスはフランス北部ノルマンディー地方にある都市の名前をブランド名にする、1889年創業のカットソーなど有名な老舗ブランドです。
特にボーダー柄で、マリンテイスト溢れるボートネックをデザインしたバスクシャツが有名です。このシャツはパブロ・ピカソが愛用したことでも有名で、着用する姿が多く残っています。
徹底した品質管理により、クオリティの高い商品は世界中で愛されていて、とにかく長持ちする、洗濯しても型崩れしないなど、是非味わってほしい逸品です。
デザインは時代に応じてアップデイトしていますが、基本形は残ってます。ボーダー柄が有名ですが、無地のラインナップも魅力的でありコーディネートの幅も広がります。
そして年齢、男女、個性を問わずオールマイティでシーズンレスな一着です。
ノームコアなトップス2.ブルックスブラザーズ ボタンダウンシャツ
ブルックス ブラザーズの創業は1818年、アメリカでもっとも歴史ある衣料ブランドです。
ブルックス ブラザーズが生み出した商品は様々ありますが、もっとも身近なものはポロカラー(ボタンダウン)シャツでしょう。
タイドアップしても、また洗いっぱなしでカジュアルでもキマルため、世界中の多くの人々に愛用されています。
リンカーン、ケネディなどの歴代米大統領からフレッド・アステア、アンディ・ウォーホルなどの有名人に愛されてきました。様々な個性にも難なく対応してきた懐の広さ、品質の高さ、デザインの汎用性が理由のようです。
スポーツシャツが基本なので、葬儀やお祝い事など正式な場所での着用には向いていませんが、それ以外の場所であれば問題なし。これほどユーティリティスキルの高いシャツは他にありません。
ノームコアなパンツ1.リーバイス501
ノームコアスタイルのアイコン的立場のスティーブ・ジョブズ氏も愛用していました。デニムパンツのオリジンが詰まったジーンズだと言えます。
ノームコアで大切にしたいのは、このオリジンを感じさせてくれるブランドであり商品なのかということではないでしょうか。
それはこのデニムパンツだけでなく、ここの紹介する商品すべてに共通することだと思います。素材もデザインも、ブランドに歴史やポリシーも大切です。
そうした要素の根幹となるもの、商品に込められた思いを感じさせてくれるのかという気がしています。
そういう意味でもリーバイス501、次代によって様々な変遷はありますが、後発ブランドの目指すお手本となっています。そして現時点でも進化を続けています。
不動の、そして孤高のデニムパンツです。
ノームコアなパンツ2.アナトミカ オリジナル618
デニムパンツの発祥はアメリカですが、フランス発日本育ちのこのブランドが作り出すスタイルには、それと比肩するオリジンが詰まっています。
1994年、ピエール・フルニエ(Pierre Fournier)が、時代や流行に左右されない高品質なアイテムを揃えたセレクトショップをパリにオープンしたのが始まりです。
そしてセレクト品だけでなく、オリジナルブランドも多く展開して行きます。なかでもデニムはブランドが重要視するアイテムと言ってもいいでしょう。
アメリカのラフなニオイとは違う、ヨーロッパしかもフランスならではの歴史と一徹さを感じるデニムです。
それは構造に表れていて、ネイビーのユニフォームからインスパイアされたというサイドシームのないデザインが採用されています。
そのためシルエットはややタイトなストレートですが、履き心地はいたって快適。機能性と美しいデザインを落とし込んだデニムパンツです。