Pコート、中高生のものだと思っていませんか?確かにダッフルコートと並んで学生受けするコート、いや親が子供に着て欲しいコートかも知れません。
Pコートの裾から制服のスカートがのぞく様子や、学生服のズボンが伸びる姿を見ると、なんだか甘酸っぱい思い出がよみがえるようです。
しかし、外国映画では壮年に近い方々が長年の相棒のようにPコートを着る姿がいて、とても微笑ましく感じることがあります。
そもそもPコートはミリタリーアイテムとして普及した経緯があります。つまり機能性に長けているという事です。男はいくつになっても『機能性』というフレーズに弱いようです。
若い時には引き出せなかったものでも、一定の年齢を迎えることで波長があいシンクロする事があります。アウターではPコートやダッフルがそうした対象ではないかと感じることがあります。
学生時代のPコートをお持ちでしたら、今年から復活させてみましょう。お持ちでなければ、見直すきっかけにしてみてください。
ピーコートの『ピー』って何?定義についてのおさらいを。
諸説あるようですが、19世紀末からイギリス海軍が艦上用の軍服として着用していたコートが, その機能性から漁師たちにも広がったそうです。
その影響は郊外にも波及し、フランスのブルターニュ地方の漁師が好んで着用しすることでさらに広がりをみせました。
さてピーコートのPとは、何を指しているんのでしょう。これも諸説ありますが、オランダでは「ラシャ(ウールの一種)のコート」を「pij jekker」と呼ぶことから、それが派生して「Pea Jaket」と言う言葉が生まれ、現在のピーコートとして定着したというのが有力だそうです。
ピーコートの定義とは?おさらいです。
ピーコートと言っても今や様々なタイプが存在しています。伝統に忠実でクラシックなタイプから進化形と呼べるものまで、バリエーションが豊富です。
いったん何をもってピーコートと呼ぶのかを整理してみながら、自分らしい、自分好みのピーコートを選ぶ基準にしてみましょう。
ポイントは「素材」「構造=作り」「ポケット」の3つに絞って検討しました。ピーコートならではの機能性が見えてきます。
「高密度のメルトンウール」を使用
船の甲板で作業しても風を通さな「メルトン」という高密度のウール素材、そのため重厚感のある生地を使用しています。
現代では、同じメルトンでも軽量ウールを使用したものが主流になっていますが、あえて当時のような重量感のある素材を使用したクラシックなものも残っています。
後者は、腕を曲げるのさえ大変なのですが『らしさ』を味わうには、こちらを探してみましょう。
「風の侵入を防ぐ構造=左右OK」
これはピーコートを定義づけるうえで重要かつ有名なポイントかも知れません。
機能性、船の上の作業で風の入らない工夫として、前立ての合わせを左右どちらが上でも可能にしています。さらにダブル仕様にすることでさらに補強しているのです。
「マフポケットと呼ばれるハンドウォーマー」
これも甲板での作用で、手を温めることが出来るポケットのコトで、前立て両サイドに直線的に切れこみがあります。
毛皮でできた円筒形、手を温める防寒具がマフと呼ばれることから、マフポケットと言われてるようになりました。中はキルティングになっているものが多く、ここでも風対策が講じられいるのです。
他にも、ボタン模様に海軍らし碇(いかり)をあしらっているなどの特徴があります。また大きな襟を立てることで、甲板での作業中でも上官の指示命令が聞こえやすい。つまり集音
効果があるのだとか。
ピーコートの基本的な特徴と照らし合わせながら、お気に入りが見つからば嬉しいです。大人だから楽しめるピーコート、気になってきたはずです。
大人顔のピーコート1. STONE ISLAND
STONE ISLAND(ストーンアイランド)は、イタリアのアパレルブランド「C.P.カンパニー」が展開するファッションブランドです。
スポーツテイスト、特にマリンテイストを感じるアイテムを多くリリースし、厳選された素材、ひねりの効いたデザインなどがセレブリティを中心に浸透しています。
独自の4層構造で仕上げたPanno-R 4L Stretch製ピーコートはまさにい大人向けの一着です。
撥水加工を施した薄手のストレッチウールを採用し、防風性と通気性を兼ね備え、現代風の『機能性』は申し分なし。薄い中綿でですが保温性に優れ、洗濯を重ねてもボリュームを損なうことはありません。
デザイン的にもチンストラップ付をけるなどの遊びがあり、ファスナー仕様のポケットが付いています。動きやすい肩の構造になっているので、インナーにニットを着込んでもストレスはありません。
大人顔のピーコート2. Kuro
デニムブランドとして評価の高い『Kuro』ですが、デニムに似合う、デニムを引き立てくれるアイテムも多くリリースしていて、気になるものが毎シーズン発表されています。
アウターやコートもその中のひとつで、ピーコートの存在感は俊逸です。
まずは素材選びから違います。こちらは愛知県にある梳毛のスペシャリストである石慶毛織社、ここが紡ぎだす「SUPER100’ メルトンウール」を使っています。
糸の段階から丁寧に紡績され、 スーツに使用するほどの原料を使って仕上げています。そのため 紡毛糸(粗い毛糸)で作った一般的なメルトンよりはるかにしなやかで、さらにハリと風合いが備わっています。
素材の良さを最大限に引き出すため日本トップクラスの技術を持つ工場で仕上げることで、『Kuro』渾身のピーコートが出来ました。
ブルーデニムでもいいですが、白デニムを合わせて冬の着こなしを楽しませてくれるピーコートではないでしょうか。
大人顔のピーコート3.フェデリティ
ピーコートは、アイビーリーガースにも愛されたアウターとして普及したようです。そのためでしょうか。学生御用達というイメージが強いのかも知れませんね。
こちらのフィデリティ社はボストンで誕生した老舗ファクトリーです。 MADE IN USAを重んじ厳選され安心感ある品質の素材を使っています。
アパレルでは生産拠点を海外にシフトすることが増え、 アメリカ製のピーコートが少なくなるなか、完成までの工程を全てを国内の自社工場で行い、アメリカらしい質実剛健な商品作りをしています。
ピーコートだけでなくフィデリティ社のアウターは信頼度が高いため、アメリカ国内はもとより世界各国のミリタリーストアでも取り扱われています。
保温性の高さと耐久性に優れたメルトンウールは、防寒性と保温性に優れています。あえてウール80%、ナイロン20%を採用し、軽量デありながら100%ウールメルトンでは同じぐらいの防寒性、耐久性を考慮した場合、厚みと重みがでてきます。
着丈が短いタイプを選べば、気軽なアウターとしてドライブなどに活躍してくれます。ボーダーではなく白やネイビー一色のバスクシャツなどを合わせれば学生、大人の両面が楽しめます。
大人顔のピーコート4.ショット
ショットと言えばミリタリーブランドとして不動の存在です。またレザーウェアも多く、特にライダースジャケットは、こちらが本家本流という憧れの存在でもあります。
そうしたアメリカンブランドから質実剛健という言葉が似合うピーコートがリリースされています。
ピーコート本来のあり方を大切にしていますが、素材選びやシルエットは現代のテクノロジーに委ね、また流れを意識していますが、『らしい』ニオイは残されたままです。
ですからスタイリッシュに着こなすというよりも、機能性を大切にし男らしく、少々野暮ったさも味わう余裕がもとめられます。
ウールパンツや上質のコットンパンツを合わせる方向でギャップを楽しむか、反対に古着、しかもミリタリーもので統一感を出すか。いずれかのベクトルをチョイスしましょう。とりあえず足元はレッドウイングがお似合いです。
大人顔のピーコート5.シーラップ
日本上陸の経緯までは調べきれませんでしたが、ここ数年Sealup(シーラップ)のアウターを見かける機会が増えました。
実は老舗ブランドと言ってもよく1935年ミラノで創業したアウターメーカー。 レインウエアからスタートして、いまや高品質を誇るアウターブランドに成長しました。デザインから生産まで完全メイド インイタリーを貫いています。
上質なウールだけを使用しているので。見るからに柔らかさが際立つメルトンウールはストレスのない極上の着心地を約束してくれます。
デザイン的にもシャープな肩周りがもたらす美しいシルエットは現代風ですが、前身頃のダブルブレストや、裏地のキルティングなどピーコートの基本は忠実に守っています。
吸い付くような襟のかたちが美しく、ドレッシーなスタイルがお勧めですが、ニットやデニムスラックスを合わせたカジュアルなスタイリングでも上品さは失いません。ダメージの効いたデニムでも受け止めてくれる余裕を感じます。
大人顔のピーコート6.オーチバル
オーチバルと言えば、マリンシャツ、ボーダー柄のTシャツが極めて有名です。フランスのリヨンで創業したのが1930年、マリンTシャツの「ORCIVAL オーチバル」ブランドをスタートさせました。
ORCIVALのマリンTシャツの原型は、元々ラッセル編みという生地で作られたものです。
この生地は一般的なカットソー生地に比べると手間がかかり、複雑な構造となっています。 現在この生地を織れるマシンはフランスでも数台しかなく、大量生産できません。
ですから昔ながらの作り方を大切にするORCIVALのマリンTシャツは、価値が高いと言えます。
頑固なもの作りをするORCIVALから、ジーロンラムのウールメルトンを使用した、軽くてやわらかい極上コートが発売されています。非常に良質な素材で手触りで、トレンドに左右されないミドルなので、大人のデイリーユースをサポートしてくれます
膨らみを出すため2重組織(経糸にジーロンラム、ヨコ糸にSuper’100の原料)に織り上げられ、見た目は重厚感はありますが実際は柔らかくしなやかな風合いに仕上がっています。
大きめの衿元やイカリマークのボタンはピーコートの基本に沿った、マリンブランドが得意とするデザインです。
やはりボーダーのマリンT シャツ、カーキのミリタリーパンツという鉄板コーデから始めましょう。
大人顔のピーコート7.バーバリー
男のアウターを語る時にバーバリーは外せません。なかでもトレンチコートを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
トレンチコートもピーコートと同様に出自はミリタリーです。つまりバーバリーにおいてピーコートも当然アイテムとしてラインアップされています。
ここで紹介するピーコートはとても現代的なデザインが加味された仕上がりです。特にボタンのあしらいが面白い印象を残しています。
しかしそれはピーコートが本来持っている『機能性』を現代風に解釈したモノだということが分かります。基本は決してズレていないのです。
素材使いだけでなく、バーバリーらしいゴージャス感はオリジナルチェックを襟裏に採用することで主張しています。
これだけの存在感があれば、コーディネートは迷う必要がありません。よしんば中にパジャマを着ていても不自然さはないかも知れません。
となれば上下ストライプ入りのジャージという思い切ったふり幅も試してみたくなりました。しかし、足元はバレンシアガのスニーカーでリッチなストリート感を加えましょう。
大人顔のピーコート8.ポール スチュワート
日本で生産したハードメルトンを使用したピーコートはポールスチュワートから。
メルトンならではの固い毛羽感や荒い手触りを解消した大人のミリタリーコートが出来ました。紹介したなかで、もっともミリタリーテイストが強い仕上がりになっています。
それはカラダの線を強調するようなカッティングと、それを中和するセンターベントと背中に装着したベルトのせいでしょう。
このコートを着ていれば、一目見ただけで位の高さが判断できます。上官としても責任感が肩のラインに乗っかっています。
そういした印象そのままにコーディネートを考えると。ミディアムグレーのウールパンツしか思いつきません。インナーはプルオーバーというよりも、カーディガンタイプで上品に作り上げます。
ピーコートの着丈について。
ピーコートと聞いて思い浮かべるシルエットは、上の画像の中でどれですか?多くはミディアムではないでしょうか。
どれもピーコートではあるのですが、その長さで軍における位が分かれるのだそうです。甲板での作業がしやすい短い丈ほど、年齢が若く位の低い人たちが 着るもので、長くなるにつれて位と年齢も高くなるそいうです。
となれば大人が着る長さは右に寄ってきますが、自身の使い途、好みに応じたチョイスが大切です。あなたのお好みは見つかりましたか。